「嫁」をやめたので、稼ぎます。

嫁をやめたら、世帯主。子どもと二人三脚の日々。

「天気の子」〜イザナミとイザナギの話

夏は東宝!ということで。
息子と一緒に「天気の子」を観てきました。

3年前に「君の名は。」が大ヒットした
新海誠監督の新作アニメーション映画です。

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「天気の子」主人公の帆高と陽菜

この映画、相変わらずというか
新海監督の「雲マニア」っぷりがハンパないです。
雲へのこだわりは「ほしのこえ」から一貫してますね。

ちらっと予告編をどうぞ。2002年の作品です。雲に注目。

www.youtube.com↑「ほしのこえ」まったく大人が出てこない、主人公2人のメールのやりとりで進むストーリー


今回の「天気の子」では、特に
積乱雲が横に広がって雨を抱えきれなくなってる
「かなとこ雲」が何度も登場します。

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大雨をもたらす「かなとこ雲」

この世界の片隅に」にも出てきましたね、かなとこ雲。
すずさんが「見たら駆け足!大雨になります」って言ってた、あれです。

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すずさんが逃げ出した「かなとこ雲」

大雨のあとの澄み切った空の気持ちいいことと言ったら!
夏休み、特にお盆の時期に観るには最高の1本ですね。


以下「天気の子」と「君の名は。」両方のネタバレを
含みますので、まだ観てない方はご注意ください。

 ☆

島を離れ、1人東京に出て来た16歳の帆高と、
母を亡くし、弟と2人で暮らす陽菜。

この2人の主人公に共通するのが「貧しさ」なんですね。
ここ数年の日本の現状がすごく現れてます。

帆高の宿泊先はネットカフェです。
ホテルは高くて泊まれない。
食事はファストフード。
割りのいいバイトを探して
スマホから掲示板に書き込む今時の子。

陽菜は年齢を偽って生活費を稼いでます。
廃ビルの中で帆高に「バイトは首になった」と
言ってたのは、店長に年がバレたんでしょうね。

キッチンで豆苗を育てている陽菜。
そういえば「凪のお暇」にもそんなシーンあったな。
どうやらTBSでドラマになっているらしいよ。
テレビないから見れませんが黒木華は確かにハマリ役だ。

www.akitashoten.co.jp


で、陽菜の弟の名前が「凪」です。
風を受けて進む「帆高」と「凪」は性格も対照的。
ちなみにこの作品、「風」も重要なポイントだったりします。

あと、ナギは『イザナギ』かな、という気もしていますが
それについては後ほど。

で、この陽菜ちゃん。
コップでネギの水耕栽培してたりして、ほんとにつつましい。
スナック菓子がチャーハンの味付けになるんですよね。
チープだけど美味しそうなんだ、これがまた。
なんとレシピが公開されてるので気になる方はこちらへ。

tenkinoko.com


凪は普通に小学校に通ってるけど
未成年の姉が就学援助受けられるのかな?とか
子供だけでアパートは借りられないし引越も無理だから
お母さんがいた頃からこの狭い2DKに住んでたのかな?
いやでも、お母さんが入院していたのは
都会のビル郡を見下ろせるくらい大きな病院の個室だったから
亡くなってから生活が苦しくなったのかな?とか・・・

色んなこと考えてたら、胸が苦しくなってしまいました。
どうしても2〜3年前の自分と重なってしまう〜。

物語の舞台は、東京の新宿・歌舞伎町です。
何度か通った事がある程度の街ですが、とにかく雑多で
すごいお金持ってそうな人もいれば
貧困の極み、みたいな人もいる。

昨年の5月末、ネットカフェで赤ちゃんを産んで殺してしまって
数ヶ月コインロッカーに隠していた母親のニュースが流れました。
息子と2人で東京に行った時の事件なので、よく覚えてます。

www.huffingtonpost.jp
このニュースを見て、なんでこの母親ばかりが叩かれるのか
なんで赤ちゃんの父親は責任を問われないのか
とても腹立たしかったのですが
それについてはまた別の記事で書けたらと思います。



そんな街で、この映画の重要な鍵を握ってるのが
廃ビルの屋上にある赤い鳥居。
鳥居というのはつまり、門ですね。
あの世とこの世の境目なのです。

新海監督の前作「君の名は。」でも
主人公の三葉は宮水神社の巫女でした。
今作の陽菜も、祈りで晴れを乞う天気の巫女です。
雨が降り続く東京なので、雨乞いならぬ晴乞いの巫女。
白いパーカーは現代の巫女装束のようにも見えます。

巫女とはつまり、神に仕える女性であり、人柱なのですが
彼岸(黄泉の国)へ行ってしまった陽菜を取り戻すために
帆高は鳥居をくぐります。

これって「古事記」に出てくる
イザナミイザナギの話ですよね。

そう、ここでもう一人の『イザナギ』が出てきます。
陽菜の弟の凪は、黄泉の国へ行こうとする帆高に
「お前のせいだ」と言って背中を押す役どころです。

君の名は。」の瀧も、3年前に死んでしまった
三葉に会うため、宮水神社の御神体を目指します。
そして、三葉の作った「お神酒」を飲む。
鳥居をくぐった帆高も同じ事をしているんですよね。

古事記に出てくるイザナミは火の神を産んだ時の
大火傷が原因で死んでしまいました。
逆に、陽菜は龍神(水の神)とつながることで
体が水のようになって、風に飛ばされて消えてしまいます。

イザナギが向かった黄泉の国は地底。
一方、帆高が向かった彼岸は、雲の上。
これも対照的です。

イザナギは黄泉の国からイザナミ
連れ帰ることは出来ませんでしたが、陽菜の場合、
巫女の力を失うことで現世に帰ってきました。
お母さんの形見の石を付けたチョーカーが
切れていたのが、その証ですね。

もしかしたら、陽菜たちのお母さんも
晴乞いの巫女だったのではないでしょうか。
作品の冒頭、病院の外では雨が降っていました。
母から娘へと受け継がれた力なのかもしれません。

陽菜と帆高が作った新しい東京は
さながら海に浮かぶ島のようです。そう考えると、
彗星がぶつかったあとの糸守町に出来た2つ目の湖も
国造りの副産物なのかな、という気がします。


ところでこの作品、もう1人お母さんのいない子供が登場します。
帆高を住み込みで雇わせる須賀圭介の娘、もかちゃん。
圭介の寝言から察するに、お母さんの名前は「あすか」のようです。
彼のオフィス「K&A」の K は Keisuke、A は Asuka なんですね。
オフィスの柱には、もかちゃんの身長が刻んであります。
夫婦2人でこの仕事を始めたのでしょう。

圭介は、この作品の中で自分に一番年齢が近く
組織に属さないライターということもあって
とても親近感を覚えるキャラクターでした。

その圭介の娘であるもかちゃん。
今はおばあちゃんと一緒に暮らしていますが
将来どんな女の子になるのか、楽しみだったりします。
凪くんに懐いてたから、もしかして?とか
いろいろと想像が膨らみます。

君の名は。」も、もう1回観てみようかな。

私はU-NEXTを使ってます。最初の1ヶ月は無料だよ〜。